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Internet Fundamentals

インターネットを支える基本のコトバ

03 IT用語における「トランジット」とは?
その定義やピアリングとの違いについて詳しく解説

インターネットは、AS *1と呼ばれる、何万ものネットワークの集合体です。ASがお互いに接続を行うことではじめて、利用者は世界中のコンテンツにアクセスすることが可能になります。
このようなAS間の接続方法として、ピアリングとトランジットという2つの手法が存在します。一般の利用者にはあまり馴染みがない概念ですが、ASを持つ事業者にとっては、トラフィックを最適な形で扱うための鍵となる、重要な概念となっています。この記事では、トランジットの意味やピアリングとの違いを初心者でも簡単に理解できるように解説していきます。

*1 AS(Autonomous System)自律システム。同一の組織によって管理されるネットワークであり、インターネットは数多くのASが相互に接続することによって成り立っています。

トランジットとは

トランジットとは、インターネット上で多くの経路情報を持つASが別のASに対して経路情報を提供する接続形態を指します。
トランジットはTier1と呼ばれる大規模な事業者などによって、通常、有償にて提供されます。このような事業者と接続し、トランジットを購入すると、一本の回線で世界中のインターネット上の経路情報を入手することができるため、相互接続に関する設定や管理の手間は省けます。その反面、流れるすべてのトラフィックが有償となるため、高コストとなってしまいます。

トランジットとピアリングの目的の違い

トランジットは、受け取るASに対してインターネット全体への経路情報を提供するのに対し、ピアリングは、2つのASが直接お互いの経路情報のみをやりとりする方法です。

トランジットとピアリングのコストの違い

トランジットは有償のサービスで、経路情報を提供するASに料金を支払う必要がありますが、ピアリングは、通常、相互のトラフィックの交換に直接的な料金は発生しません。なおピアリングを行っても、接続回線やIXの利用料が発生するため完全に無料というわけではありません。このような利用料はトランジットと異なり定額料金の場合が多く、そのような違いも考えたうえで、どちらにするかを選んでいくことになります。

2つの接続方法の違いについて、対人関係に例えて見てみましょう。
ピアリングは「直接連絡の取れる友人関係」と考えることができます。 ピアリングを、2人の友人AとBが直接連絡をとる状況として想像してみてください。AとBは直接お互いの連絡先を知っているので、直接2人だけのプライベートなやり取りをすることができます。とはいえ、一人一人友人になっていくのは時間がかかりますし、誰とでも友人になれるとは限りません。そこで、トランジットが利用されます。

これに対し、トランジットの提供者は顔の広い「仲介者」と考えることができます。
Aが、CやD、EやFとも連絡が取りたい、だけどその連絡先を知らないという場合、仲介者であるTに相談します。Tは、C、D、E、F、みんなの連絡先を知っているので、Aと顔を繋いであげることができます。「友だちの友だち」という関係と少し似ているかもしれません。でも、連絡するたびに「手数料」を払う必要がある点は、「友だちの友だち」とは違いますね。

まとめ

AS間の接続方法の一つであるトランジットに焦点を当てて解説してきました。トランジットは、手間がかからない接続手段ですが、コストがかかるというデメリットも存在します。そのため、経済的な運用を考慮すると、IX(インターネットエクスチェンジ)を通したピアリングの利用が有益と言えます。結論として、トランジットのメリットを享受しつつ、そのデメリットをピアリングで補完するといった、両者の使い分けによるネットワーク運用を目指していくことが必要となります。