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Internet Fundamentals

インターネットを支える基本のコトバ

02 ピアリングとは?
インターネット接続の基礎を詳しく解説

インターネットがどのように繋がっているのか、気になったことはありませんか?
その答えを探る鍵として、ピアリングという仕組みがあります。 この記事では、初心者の方でも理解できるように、インターネットの効率的な運用に欠かせない知られざるキーワードであるピアリングについて解説していきます。

そもそもASとは

AS(Autonomous System:自律システム)とは、組織などが運営する独立したネットワークのことで、インターネットを構成するネットワークの単位です。各ASは、それぞれのルーティングポリシーを持っています。IT企業やISP*1など、さまざまな事業者がASを運営し、各ASには固有のAS番号が割り当てられているため、AS番号は、インターネット上で各ネットワークを識別することに利用されています。例えば、インターネット上の通信を効率的に行うための、BGP(Border Gateway Protocol)*2を用いた経路情報の交換にも用いられています。

*1 ISP(Internet Service Provider)インターネット接続業者。
*2 BGP(Border Gateway Protocol)経路制御プロトコル。

IX(インターネットエクスチェンジ)とは

次にピアリングと関わりの深いIX(インターネットエクスチェンジ)についても解説します。

IXとは、インターネット上のトラフィックを効率的に交換するためのプラットフォームで、ISPやコンテンツプロバイダなど様々な事業者のASが接続し、相互にピアリングによるトラフィックのやりとりを行っています。IXが各ASをつなぐためのハブとなることで、トラフィックの交換がスムーズになり、インターネットの遅延低減やAS運用コストの削減に繋がっているのです。

ピアリングとは

ではここで、本記事のメイントピックであるピアリングについて説明していきます。

ピアリングとは、インターネット上でAS同士が直接接続し、トラフィックを相互に交換する接続形態のことを言い、ピアリングには、特定のAS同士がピアリングを行う「プライベートピアリング」とIXを通して複数のAS同士がピアリングを行う「パブリックピアリング」の2種類があります。

プライベートピアリング

プライベートピアリングは、ISPやコンテンツ会社が、直接、互いのネットワークを接続する方法です。
各事業者は専用の回線を用意し、相互にIPアドレスやルーティング情報を共有します。
プライベートピアリングは双方の事業者が合意する形で運用されるため、ポリシーやコストの面で柔軟に対応できるというメリットがある反面、ピアリングの相手が多くなると、接続のための回線のコストや管理が増えるというデメリットもあります。

パブリックピアリング

パブリックピアリングは、IXを通して、複数のISPやコンテンツ会社が相互に接続する方法です。これにより、IXに繋ぐだけで、多様なネットワークと効率よくピアリングすることが可能となります。IXの利用料はかかりますが、その上で行うピアリングは無償であることが一般的です。

ピアリング以外の接続形態~トランジット~

ネットワーク間の接続には、ピアリングの他に、トランジットという形態があり、こちらについても補足します。
トランジットは、インターネット上で多くの経路情報を持つASが別のASに対して経路情報を提供する接続形態です。一般的に、大規模なプロバイダが小規模のプロバイダにトランジットによる接続サービスを有償で提供しています。ピアリングに比べて、広範囲な経路情報をまとめて得ることができますが、ピアリングと異なり有償なためコストが高くなりやすいというデメリットがあります。

IXによるピアリングのメリット

理解を深めるため、パブリックピアリングのメリットをより詳しく解説していきます。

通信速度の向上

IX上でピアリングを行うことによって、通信速度の向上が期待できます。ピアリングを行うASは、BGPプロトコルを用いて相互間でルーティング情報を交換し、最適な経路でデータを転送することで、インターネットトラフィックは余分な経由地を回避し、遅延が低減されます。

ストリーミングサービスやオンラインゲーム、金融取引など、わずかな遅延も許されないサービスが普及した中、このような遅延の短縮は、インターネットサービスの品質向上に貢献していると言えるでしょう。

通信コストの削減

小規模な事業者は、自身のAS内の経路情報しか有していません。しかし、大規模なISPが提供する有償のトランジットサービスを通じて、他のISPやコンテンツ企業の経路情報を手に入れ、世界中と通信することができます。ただし、この方法だけでは、コストが高くなってしまいます。
IXによるピアリングを行うことで、多くの企業とまとめて無償で経路情報を交換できるため、通信コストを大きく削減することが可能になります。

まとめ

インターネットは、無数のネットワークの集合体、そのネットワークが互いに繋がる方法の一つがピアリングです。ネットワークは増え続け、成長し続けるため、誰と誰がどのようにピアリングを行うかも、常に検討され、更新され続けています。
ピアリング、そしてIXを通じたパブリックピアリングは、インターネットが快適であり続けるためのキーワードなのです。