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Internet Fundamentals

インターネットを支える基本のコトバ

09 ネットワークレイテンシとは?
測定方法や改善方法まで詳しく解説

WebサイトやWebサービスがなぜか遅い・重いというときがありますよね。その理由の一つに、ネットワークの「レイテンシ」が関係しています。この記事では、レイテンシの概要から測定・改善方法まで初心者でも簡単に理解できるように解説していきます。

ネットワークの重要な指標であるレイテンシについて深く理解し、快適なインターネット環境構築に役立ててください。

レイテンシとは

レイテンシとは、データ転送における指標のひとつで、データが送信される際に生じる遅延時間のことです。具体的には、送信者から受信者へのデータ送信にかかる時間、すなわち、データが一点から別の点へ伝わるまでの時間のことを指します。

遅延時間が短く応答が早いことをレイテンシが小さい(低い)と言い、遅延が長く応答が遅いことをレイテンシが大きい(高い)と言い、レイテンシはミリ秒(ms)で表します。
レイテンシが小さければ小さいほど、データアクセスに関する性能は高い、つまり、インターネット通信の状態が良好であると評価されます。

快適な通信環境を提供するためには、レイテンシをできるだけ抑えることが重要です。

スループット、帯域幅との違い

レイテンシに加え、ネットワークの通信性能を判断するためには、スループットと帯域幅の理解も不可欠です。
スループットは、一定時間内にネットワークが処理できるデータ量を指し、実際のデータ伝送速度を表します。
対して、帯域幅は通信チャネルが持つデータ伝送能力の最大値を示し、理論上の最大伝送速度を指します。
これらはどちらも通信品質を測定する際に重要な指標であり、それぞれ異なる役割を持っています。スループットは実効的な通信速度を、帯域幅は可能な通信量の上限を、そしてレイテンシはデータが目的地に到達するまでの時間遅延をそれぞれ示しています。高速かつ安定した通信を確保するためには、これら三つの要素が互いに最適に機能し合うように調整する必要があります。

レイテンシの測定方法

レイテンシの測定方法は複数ありますが、一般的には、pingコマンドを用いたものが広く利用されています。
pingコマンドとは、TCP/IPの世界における基本的なコマンドのひとつで、送信元のデバイスから受信先のデバイスへICMP*1パケットと呼ばれる特定の形式のデータを送り、それが返信されるまでの時間を計測します。

*1 ICMP ( Internet Control Message Protocol ) インターネット制御メッセージプロトコル

この時間が往復でどれくらいかかったかを表示することで、レイテンシを把握することができます。ただし、pingコマンドによるレイテンシの測定は、あくまで目安であり、実際のデータ通信の速度とは異なる場合があります。そのため、より正確な測定を求める場合には、専用の測定ツールやプロトコルを使用することが望ましいです。

レイテンシが生じる主な原因

レイテンシを引き起こす要因は多岐に渡り、サーバー、ネットワーク機器、アプリケーションなどのインフラ全体に及びます。システムの応答速度が遅れると感じる際は、これらの潜在的な原因を洗い出し、それに応じた対策を実施することで、レイテンシを減少させることができます。

ネットワークの伝送遅延

伝送遅延とは、パケットが転送される際の遅延を指し、パケットの最初のビットが送信されてから、最後のビットの転送が完了するまでの時間のことです。この遅延を管理するためには、ネットワークの帯域幅の適切な割り当てや、効果的なキューイング戦略が必要です。

ネットワークの輻輳遅延

輻輳遅延とは、ネットワーク上のデータトラフィックが一定の帯域幅を超えて集中することによって発生する遅延です。この状態が発生すると、パケットの遅れや紛失、その結果として生じるレイテンシの増大が発生します。ネットワークトラフィックの監視と適切なトラフィック管理により、輻輳遅延は緩和できます

ネットワークの伝搬遅延

伝搬遅延とは、拠点間のケーブルの距離が長いことにより、パケット伝送に物理的時間がかかることで発生する遅延のことです。伝搬遅延は距離に比例するため、物理的な距離の短縮や、より速度の速い伝送メディアの使用によって改善されます。つまり、ユーザーから距離的に近い国内のサーバーへの接続の方が、海外への接続よりもデータ転送時間は短くなる傾向があります。

アプリケーションやプログラムの設定

アプリケーションやプログラムの設計や実装が不適切であると、システム全体のパフォーマンスに影響を及ぼし、結果的にレイテンシが増加する原因となります。この問題は、データベースの最適化が不十分である場合や、不必要な中間ソフトウェア層が存在する場合、またはネットワークリクエストの最適化が行われていない場合に見られます。

サーバーの処理性能が低い

サーバーの処理性能が低い場合、要求に対する応答時間が長くなります。これは、サーバーのCPUやメモリリソースが不足している場合や、最適化されていないアプリケーションコードに起因することが多いです。処理性能が低いサーバーは高トラフィック状況下で特に問題を引き起こし、遅延の増大やサービスの停止に繋がる可能性があります。

レイテンシの改善方法

レイテンシの改善方法には、いくつかのアプローチがあります。
ここで代表的な方法を一つひとつ分かりやすく解説していきます。

国内の高速なサーバーに切り替える

前述したように、伝搬遅延は、ユーザとサーバー間の物理的な距離に比例して増加するため、この距離を短縮することが望ましいです。言うまでもなく国内のサーバーは、海外のサーバーと比較して、物理的な距離が短いため、データの伝送が速くなります。

サーバーの性能向上

サーバーやネットワークの処理性能を向上させることでも、レイテンシは改善されます。具体的には、ハードウェアのアップグレードやネットワーク機器の最適化が挙げられます。

ハードウェアのアップグレードでは、CPUやRAMの性能を向上させることで、データ処理の速度が向上します。

ネットワーク機器の最適化では、ルーターやスイッチの設定や構成を見直すことで、データの伝送が効率化され、レイテンシが低減されます。

アプリケーションやファイルの最適化

アプリケーションやファイルの処理を改善することで、レイテンシが短縮されることが期待できます。これには、アプリケーションの最適化やファイルの圧縮が含まれます。

アプリケーションの最適化では、コードのリファクタリングやアルゴリズムの見直しなどを行い、処理速度を向上させます。

ファイルの圧縮では、データサイズを縮小することで、ネットワークを通じて送受信されるデータ量が減少し、結果としてレイテンシが改善されます。

CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を利用する

CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)とは、インターネット上に広がる分散型のサーバーネットワークを指します。このネットワークはキャッシュ機能を用いて、オリジナルのサーバーの代わりにWebコンテンツをユーザーに提供します。キャッシュを通じて高速なレスポンスを可能にし、さらにユーザーに最も近い位置にあるCDNのサーバーからコンテンツを配信することで、遅延を最小限に抑え、迅速なコンテンツ配信が可能です。

まとめ

レイテンシの低減は、ユーザー体験の向上に直結し、システムの応答性能を高めることができますが、効果的な対策は状況に応じて異なります。様々なアプローチの中から、最適なレイテンシ改善策を選ぶことが重要です。