Internet Fundamentals
インターネットを支える基本のコトバ
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ビジネスを支えるネットワークの冗長化とは?
メリットや種類を徹底解説
「この説明は冗長だ」などと言えば、一般には無駄が多くて長い、というネガティブな言葉。しかし、インターネットの世界では違います。
この記事では、ネットワークにおける「冗長化」とは何なのか、冗長化にはどのような方法があるのかを、初心者でも簡単に理解できるように解説していきます。
ネットワークの冗長化とは
ネットワークにおける「冗長化」あるいは「冗長構成」とは、障害が発生したときに備えてバックアップを準備しておくことです。通信回線であれば、AからBまで通信するルートを複数用意しておくこと、通信機器であれば、同じ機器を複数用意しておくことなどがこれにあたります。
冗長化を行うことによって、ネットワーク障害が生じてもサービスの中断時間を最小限に留め、安定したサービス提供を維持することが可能となります。
ネットワーク冗長化のメリット
冗長化は、BCP*1の重要な要素としても機能します。とくに自然災害を意識した冗長構成を取る場合は、バックアップ用の機器や回線を、メインの設置場所から地理的に遠い場所に離して設置することがよくあります。そうすることで、自然災害が発生し、主要な事業施設が被害を受けたとしても、遠隔地に設置された機器が無事ならば、企業はバックアップ用の設備を使って事業を継続することができます。
*1 BCP(Business Continuity Plan)事業継続計画
ネットワーク冗長化の種類
ネットワークの冗長化には「ホットスタンバイ」と「コールドスタンバイ」の2種類が存在しています。これらの方法は、ネットワークの可用性を高めると同時に、障害からの回復力を向上させることを目的としています。以下に、それぞれの方式の特徴について説明します。
ホットスタンバイ
ホットスタンバイは、待機中もバックアップ用の機器に電源を入れておくという方法です。これにより、ネットワークのダウンタイムがほとんどない状態を実現し、サービスの継続性を高めることができます。ただし、バックアップ用の機器も同時に稼働しているため、運用コストが高くなることがデメリットとして考えられます。
コールドスタンバイ
コールドスタンバイは、待機中はバックアップ用機器の電源をオフにしておくという方法です。この方法では、障害が発生したときは、手動でバックアップ用の機器に切り替えを行います。常時電源を入れた状態でネットワークに接続する必要がないため、コストを削減できますが、手動で作業が必要なため、準備に時間がかかってしまうというデメリットがあります。
レイヤー別の冗長化
レイヤー別の冗長化とは、ネットワーク機能やシステム構成の各レイヤーごとに冗長化を行うことです。これにより、特定のレイヤーで障害が発生した場合でも、他のレイヤーが機能し続けるため、ネットワーク全体の可用性が向上し、障害からの回復が早くなります。
一般的に、物理層やデータリンク層などのレイヤーごとの冗長化が行われます。具体的な方法を、説明していきます。
【レイヤー1】物理層
物理層の冗長化とは、ネットワーク機器やサーバー、ケーブルなどを二重化することです。
また、サーバーに電源を複数搭載する電源冗長も用いられます。
【レイヤー2】データリンク層
データリンク層の冗長化は、チーミング、リンクアグリゲーション、スパニングツリープロトコル(STP)などが挙げられます。
- チーミング:1つの機器に挿入された複数のNIC*2を疑似的に一本化するという方法
- リンクアグリゲーション:複数の通信経路を利用して、一つに問題が生じても他で通信ができるという方法
- スパニングツリープロトコル:STPと略され、ループ状に構成されたネットワークでデータが無限ループしないようにする仕組み
*2 NIC(Network Interface Card)コンピュータなどの機器を通信ネットワークに接続するための拡張装置
【レイヤー3】ネットワーク層
ネットワーク層の冗長化は、VRRPやECMPなどが挙げられます。
- VRRP:ネットワーク上で複数ルーターをまとめて仮想的に1つに見せて運用する方法
- ECMP:同コストの経路が複数ある場合、すべての通信経路に負荷を分散させる方法
【レイヤー4】トランスポート層
トランスポート層の冗長化は、HAやDSRが挙げられます。
- HA:2台のファイヤーウォールをひとつにまとめ、稼働機器と待機機器とする方法
- DSR:ロードバランサーを経由せずにサーバーからクライアントへ直接トラフィックを返す方法
まとめ
冗長化を行うことでネットワークの信頼性を向上させることができます。レイヤー別に適切な技術選定や設定、運用が重要です。