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Internet Fundamentals

インターネットを支える基本のコトバ

07 インターネットにおける「トラフィック」とは?
トラフィックの増加によるトラブルや対策を詳しく解説

動画配信サービスの浸透、リモートワークや遠隔教育の普及、ゲームコンテンツの大容量化などが進み、インターネットにおけるトラフィックは増加の一途を辿っています。
「トラフィック」とは、ネットワークを流れるデータの流量のことです。通信回線や通信機器が扱うことのできるトラフィックには限界があるため、トラフィックのコントロールは、ITや通信に関わる事業者にとって重要なテーマです。キャパシティを超えたトラフィックは、提供するサービスの品質低下に直結します。この記事では、トラフィックの概要からトラフィック増加への対策まで初心者でも簡単に理解できるように解説していきます。

トラフィックとは

トラフィック、またはトラヒックとも呼ばれます。これは、ネットワークにおいて、一定時間内に流れるデータ量のことを指します。道路の交通量を指すtrafficと同じ概念です。このデータは、「パケット」と呼ばれる単位で構成されており、ネットワーク上の通信はこのパケットのやり取りによって行われます。

トラフィック増加によるトラブル

前述の通り、ネットワーク回線上で交換されるパケットの数が増加すると、トラフィック量が増加し、結果としてネットワークが混雑することになります。では、ネットワークが混雑すると、どのような問題が生じるのでしょうか。ここでは、その具体的な問題点について一つずつ解説していきます。

ネットワーク速度の低下

トラフィック量が、ネットワーク設備のキャパシティを超えて流れてくると「輻輳」が発生します。輻輳すると、パケットを適切に処理できない状況になります。この状態では、ネットワーク上のデータがうまく流れず、通信速度が低下してしまいます。

データの損失

ネットワーク機器には一時的にデータを保存する「バッファー」と呼ばれるメモリ領域があります。トラフィック量が増加し、このバッファーの容量を超えると、新たに到着するパケットを破棄する「パケットロス」が発生し、重要なデータが失われる恐れがあります。
また、場合によっては、破棄されたデータに対して送信元の機器は再送信を行い、この破棄と再送信の繰り返しにより輻輳の状態が長引いてしまうのです。

ネットワークダウン

上記の状態がさらに悪化すると、最終的にはネットワーク障害に至ることがあります。これは、サーバーが機能停止したり、ネットワーク接続が完全に失われたりする状態です。
ネットワーク障害が発生すると、接続されているサーバーや端末はネットワークサービスにアクセスできなくなります。これにより、ウェブサイトの閲覧、ファイルのダウンロード、オンライン通信などが一時的に不可能になり、ビジネスやコミュニケーションに重大な影響を及ぼします。

トラフィック増加への対策

トラフィック増加に対応するためには、まず理由となっている要因を特定し、適切な対策を立てることが重要です。

具体的な対策としては、ネットワークトラフィックの監視やトラフィックの負荷分散が挙げられます。

ネットワークトラフィックの監視

輻輳の原因を解明するためには、どの場所やどのタイミングでトラフィックの増加が発生しているかを把握することが重要です。そのために、ネットワークトラフィックの監視が必要となります。
トラフィックを監視することで、異常なトラフィックの流れや予期しないデータの増加を早期に検知し、サーバーやネットワーク機器に過度の負荷がかかる前に対策を講じることができます。

トラフィックの負荷分散

トラフィックの負荷分散とは、複数のサーバーやネットワーク機器が存在している環境において、特定の機器にのみ過度の負荷がかかるのを防ぐために、トラフィックを複数の機器に均等に分散するプロセスです。負荷分散は、ロードバランサーやDNS設定の調整、負荷分散ソフトウェアを利用して実現することが可能です。
これによりネットワークの効率が向上し、システムの冗長化が促進され、安定性が確保されます。

ネットワークトラフィック監視の種類

前述したように、トラフィック監視は、トラフィックの情報を監視し、問題が発生した際にその原因を特定する役割を果たします。
この監視に用いられる方法は、様々なものが存在します。次に、トラフィック監視に関するいくつかの主要な方法を紹介します。

SNMP監視

SNMPとは、Simple Network Management Protocolの略で、ネットワーク内に存在する装置の状態を監視・制御するプロトコルです。

SNMPは、世界共通の規格であり、その汎用性により、多様なメーカーやベンダーの機器での使用が可能です。また、特定の監視ツール固有のエージェントをインストールする必要がなく、導入が比較的簡単であるというメリットがありますが、SNMPは基本的にモニタリングと管理タスクに特化しており、より高度なネットワーク分析は他の専門ツールが必要となります。

パケットスニファ

パケットスニファとは、ネットワーク上のノードを通過したデータを取得し監視することで、通信状況を把握する方法です。ここでいうノードとは、ネットワーク上でデータ通信を行うための端末や機器のことを指します。
パケットスニファでは、送受信されている具体的な内容まで監視を行うため、詳細な分析を行うことができます。

SNMPより深いレベルのデータを取得できますが、CPUやネットワークなどへの負荷がかかってしまうデメリットがあります。

フロー監視

フロー監視は、ネットワーク上でのトラフィックフロー、つまりデータの流れを監視し、ネットワークパフォーマンスに関する問題点を特定する技術です。フロー監視はパケットごとではなく、ある特定の範囲で区切った「アクション」という単位によって情報を監視します。
Cisco社のNetFlowやInMon社のsFlowなどのフロー技術が広く利用されています。また、フローデータを収集と可視化のために、フローコレクターと呼ばれるシステムの導入が必要です。
フロー監視は、ネットワークの問題原因を特定しやすいというメリットがありますが、CPUやネットワークへの負荷増加というデメリットも伴います。

パケットスニファが、ネットワークのデータをパケット単位で深く分析するためのツールに対し、フロー監視はネットワークの全体的な流れやパターンを理解するために使用され、通常はより大まかなデータ分析に適しています。

まとめ

大量のトラフィックが流れると、輻輳やサーバーダウンなどビジネスに大きな影響を与えることがあります。ネットワークを運用する際には、トラフィックの適切な監視と対策を行うことで、トラブルを未然に防ぐことが重要となっています。